「何をするべきか」の霧が晴れた。地元の専門人材と歩む、数字と意識を変えるSNS改革。

人手不足が深刻化する中、ITやデザインなどの専門人材を確保することは、企業にとって年々難しくなっています。こうした課題に対する一つの答えが、「副業人材」の活用という選択肢です。

今回、副業人材の活用経験がない県内企業3社にご協力いただき、実証的に副業人材活用に取り組むプロジェクトを実施しました。
プロジェクトを通じて見えてきた、佐賀に根ざした県内の専門人材と取り組む「佐賀型」副業人材活用の事例とポイントを紹介します。

有限会社大望閣 古舘佳子氏(左) 支配人 古舘健一氏(右)

副業人材導入の背景

―――このプロジェクトが実施される以前、会社としてどのような課題を抱えていましたか?

私たちの課題は、「何が課題なのかが分からない」でした。
これまでも自分たちで写真共有アプリを運用していましたが、目的が曖昧で、「とりあえず投稿してみる」程度にとどまっていました。当時は「これでいいのかな?」「この投稿は誰に刺さっているんだろう?」と手探りのまま続けていました。
業務の合間に投稿していたため、内容に納得いかなくても「とりあえずやらなきゃ」と思いながら投稿していたのが実情です。フォロワー数が思うように伸びず、成果を実感できないまま運用を続けていました。

副業人材活用に踏み出した理由

―――これまでに「副業人材」という言葉を聞いたことはありましたか?また、副業人材の活用についてどのようなイメージをお持ちでしたか?

今回提案していただくまで、副業人材という言葉は聞いたことがありませんでした。
活用するという発想がなく、話を聞いても具体的なイメージが湧きませんでした。

―――今回、副業人材活用に挑戦しようと思われた理由を教えてください。

「このままでは何も変わらない」「”何をすればいいか分からない”という状況から抜け出したい」と思ったことがきっかけです。
せっかく写真共有アプリを運用するなら、きちんと効果を実感できる形にしたい。その思いから、副業人材の活用を決めました。

プロジェクトの実行プロセス

―――藤井さんの第一印象はどうでしたか?

「こんな方にお願いしてもいいのかな?」というのが正直な気持ちでした。
最初に藤井さんのお話を聞いたとき、「こんなにレベルの高い方に、私たちのような小規模の仕事を引き受けてもらっていいのだろうか?」という心配がありました。
また、これだけ経験が豊富な方だからこそ、「他愛もない質問や相談などに答えてもらえないかもしれない」と身構えていましたね。

オンライン事務サポート 藤井真紀さん(右端)
―――プロジェクトはどのように進んでいきましたか?

印象的だったのは、最初に「4ヶ月で集客を目指すのではなく、まずは土台を整えましょう」という提案です。
私たちは当時「フォロワーを1万人にする」という目標を立てており、フォロワーの増加ばかり意識していました。しかし、藤井さんから「フォロワー数に固執するよりも、誰に届けたいのかを明確にすることが大切」とアドバイスを受け、「数が増えれば良いわけではない」というのが分かりました。

藤井さんにアドバイスを受けながら、まずはターゲット層を整理すること、アカウント全体の世界観を整えることからスタートしました。投稿についても、予約投稿機能を活用して「2日に1回」の投稿を守り、数値を確認しながら改善を重ねていきました。

―――プロジェクトを進行していくなかで、特に印象に残ったことはありますか?

藤井さんが何度も旅館に足を運んでくださったことです。
写真の撮り方一つをとっても、自分たちにはない視点がありました。実際に写真を撮影されている様子も拝見しましたが、「素人とプロではこんなに視点が違うのか」と驚きました。
また、オンラインでのやり取りに慣れていない私たちにとって、直接顔を合わせて相談できるのがありがたかったです。困ったことがあっても、すぐチャットツールでやり取りしてもらえたので安心でした。

―――藤井さんに伺います。大望閣さんの印象と、今回の支援で意識したことを教えてください。

最初に大望閣さんのアカウントを拝見した際、発信の軸が定まっておらず、誰に発信しているのかが分かりにくい印象を受けました。

期間が4ヶ月と限られていたため、まずは「土台づくり」に集中することを提案しました。ターゲット設計や競合分析、コンセプト設計など「検索に表示されやすい施策」を取り入れ、分析結果を投稿に反映していきました。
また、今回は県内での支援だったこともあり、現地で定期的にコミュニケーションがとれたのもよかったです。物理的な距離が近いからこそ細かなニュアンスまで共有でき、方向性のズレを防ぐことができたと感じています。

プロジェクトの成果や変化

―――今回のプロジェクトを経て、何か変化はありましたか?中でも、「ここは大きく変わったな」と思う部分があれば教えてください

大きく変化したのは、閲覧率やリーチ数です。全体の閲覧数が以前と比べて約3倍に増えました。
落ち着いた雰囲気の写真や世界観を意識するようになってから、私たちが本来のターゲットにしている50〜60代のお客様の来館が増えてきたと感じています。
また、お客様による投稿やシェアが増えたのも、閲覧数の増加につながったと考えています。
意識の面では、「フォロワー数を増やすことではなく、刺さる人に届ける」というマインドに変化したのは大きいです。周囲からも「最近写真共有アプリよく見るよ」と声をかけられるようになり、社内の雰囲気や社員の意識も変わってきたと感じています。

―――藤井さんが感じた、成果や変化についても教えていただけますか?

数字の伸びももちろんですが、それよりも大きいのは、アカウントの軸が明確になったことです。
「誰に届けたいのか」という視点が定まり、発信の方向性がブレなくなりました。その結果、ターゲット層にしっかり刺さる投稿ができるようになったと考えます。
また、現地での継続的なコミュニケーションを繰り返すことで、大望閣さんとの信頼関係を築けたことも印象的でした。何かと頼ってもらえる場面も増え、パートナーとして伴走できたことは、私自身にとっても大きな経験だったと思います。

制度や支援への想い

―――今回の経験を踏まえて、制度や支援について感じたことはありますか?

「この人は何が得意で、どれくらいの金額で依頼できる」といった情報が可視化できるようになれば、より活用しやすくなるのではないでしょうか。たとえばスポットワークのように、スキルや価格が明確だと検討しやすいですよね。
人手不足の中で正社員を雇うのは大変ですが、スポットで専門人材にお願いできる仕組みがあれば、企業にとって大きな選択肢になると思います。

―――支援側から見て、今後どんな制度があると良いと感じますか。

まず、県内で副業やフリーランスという働き方が認知されていないので、「佐賀にもこれだけのスキルを持った人材がいる」ということをアピールする必要があると感じました。
企業と人材のマッチングイベントのような場があれば、もっと副業人材の可能性は広がるのではないでしょうか。「県内だからこそ、顔を合わせて支援できる」という強みもありますし、物理的な距離が近いことは、企業側はもちろん支援側にも大きな強みです。
県内の人材を県内企業が活用する循環が、今後も広がっていけばいいなと考えています。

今後に向けて

―――今回のプロジェクトを経て気づいたこと、そして今後どのような展望を描いてるかについて教えてください。また、これから挑戦を考えている企業にメッセージをお願いします。

私たちは今回の取り組みを通じて、「分からないからやらない」ではなく「まずはやってみる」という姿勢の大切さを実感しました。
副業人材という言葉すら知らなかった私たちですが、実際に活用させていただいて、その可能性を強く感じています。
今後は、藤井さんと一緒に整えた土台をもとに、写真共有アプリの運用を継続していきたいと考えています。
副業人材は、人手不足に悩む企業にとって大きな可能性を秘めていると感じています。
企業によって向き不向きがありますが、「副業人材」という選択肢があることを知ってもらえたら嬉しいですね。

―――最後に、藤井さんからもメッセージをお願いします。

今回の支援を通じて、県内にも専門性を持った人材がいること、そして地域企業と十分に伴走できることを改めて実感しました。顔を合わせて支援できる距離感は、地方ならではの強みであると考えています。
今後も、県内企業が気軽に専門人材を活用できる枠組みが広がっていけば、地域全体における副業人材の可能性も広がっていくのではないでしょうか。